
本格的な夏がやってきましたね。毎年この時期になると、ニュースで熱中症の話題を目にする機会が増えます。「うちは大丈夫かな」と、離れて暮らす親御さんや、一緒に暮らすおじいちゃん・おばあちゃんの顔が浮かんだ方も多いのではないでしょうか。
実は、高齢者の熱中症は炎天下の外出中よりも、住み慣れた家の中で起きることがとても多いと言われています。「家にいるから安心」とは言えないのが、高齢者の熱中症のこわいところです。
この記事では、在宅支援の仕事をしている私が、現場でよく出会う「あるある」も交えながら、高齢者が熱中症になりやすい理由、水分を飲んでくれない時の工夫、部屋の環境づくり、そして危ないサインの見分け方まで、家族ができることをまとめました。どうぞ最後までお付き合いください。
なぜ高齢者は熱中症になりやすいの?
まず知っておきたいのは、「高齢者は若い人と同じ感覚では夏を乗り切れない」ということです。理由は大きく4つあります。
のどの渇きに気づきにくい
年齢を重ねると、のどの渇きを感じるセンサーの働きがにぶくなります。つまり、体は水分が足りていないのに、本人は「のどが渇いた」と感じないのです。「飲みたくないから飲まない」のではなく、「飲みたいと感じられない」。ここが一番大事なポイントで、だからこそ周りの声かけが必要になります。
体にたくわえられる水分が少ない
人間の体は多くが水分でできていますが、その割合は年齢とともに減っていきます。若い人に比べて、高齢者はもともと「水筒の中身が少ない」状態。同じ量の汗をかいても、若い人より早く水分不足になってしまいます。
暑さを感じにくく、汗をかく力も弱くなる
暑さを感じるセンサーや、汗をかいて体温を下げる働きも、年齢とともに弱くなります。部屋が30度を超えているのに「今日は涼しいね」なんてことも、現場では珍しくありません。本人の「暑くない」は、あてにならないことがあるのです。
トイレの心配で、わざと水分を控えてしまう
そしてもう一つ、見落とされがちなのがこれです。「夜トイレに起きたくないから」「失敗したら申し訳ないから」と、自分の意思で水分を控えている方が実はとても多いのです。本人なりの理由があるので、「飲んで!」と言うだけでは解決しません。このあと、工夫を紹介しますね。
水分補給のコツ、飲んでくれない時の工夫
「水を飲んでね」と言っても、なかなか飲んでくれない。在宅介護のご家族から、本当によく聞くお悩みです。現場で効果を感じている工夫をいくつかご紹介します。
「のどが渇いたら」ではなく「時間で」飲む

のどの渇きを感じにくい以上、渇きを合図にはできません。おすすめは、生活の節目とセットにすることです。
朝起きたら1杯
朝食・昼食・夕食で1杯ずつ
10時と15時のお茶の時間に1杯ずつ
お風呂の前後に1杯
これで無理なくコップ7〜8杯。「お薬の時間」と同じように、「お水の時間」を習慣にしてしまうのがコツです。ご家族が一緒に「私も飲むから、一緒に飲もう」と誘うと、すっと飲んでくれることも多いですよ。
⚠️ 大事な注意
心臓や腎臓の病気で、お医者さんから水分の量を制限されている方もいます。持病のある方は、1日にどれくらい飲んでよいか、必ずかかりつけ医に確認してから目標量を決めてください。
「飲む」だけじゃない、「食べる水分」を活用する

水分補給は飲み物だけではありません。食べ物からとる水分も立派な水分補給です。
ゼリーや寒天(市販の水分補給ゼリーも便利です)
スイカ、桃などの季節の果物
お味噌汁やスープ(塩分も一緒にとれます)
おかゆ、にゅうめんなどの水分の多い主食

「水はいらない」と言う方でも、「スイカ切ったよ」なら喜んで食べてくれる。そんな場面を私は何度も見てきました。汗をかく夏は、水分と一緒に塩分も失われるので、お味噌汁や梅干しなどを上手に組み合わせるのがおすすめです。
上記の写真は水分量がとても多い野菜や果物なので、特におすすめです!!
好みの飲み物・好みの器で「飲みたくなる」工夫
「水は味がないから嫌」という方には、麦茶、ほうじ茶、薄めたスポーツドリンク、経口補水液など、その方の好みに合うものを探してみてください。昔から使っている湯のみやお気に入りのコップに変えただけで飲む量が増えた、という例もあります。枕元に水筒やふた付きのコップを置いておくのも、夜間の備えとして安心です。
トイレの心配には「気持ちに寄り添う」対応を
水分を控える理由がトイレの不安なら、そこに向き合うことが一番の水分対策になります。夕方以降は量を控えめにして日中しっかり飲む、寝室からトイレまでの動線に明かりをつける、ポータブルトイレや夜用の紙パンツを検討する。「飲んでも大丈夫」という安心があってこそ、水分はとれるようになります。
エアコンと部屋の環境、「もったいない」「寒い」との付き合い方
高齢者の熱中症は、夜間や室内で起きることが多いもの。部屋の環境づくりは水分補給と同じくらい大切です。
「体感」ではなく「温度計」で判断する
先ほどお話しした通り、本人の「暑くない」は感じにくくなっており、あまりあてになりません。大きい文字の温度計・湿度計を、居間と寝室の見える場所に置きましょう。「28度を超えたらエアコン」のように、数字でルールを決めておくと、本人にも家族にも分かりやすくなります。
エアコンを消してしまう問題
「電気代がもったいない」「冷えると体に悪い」と、こっそりエアコンを消してしまう。在宅介護の夏の定番のお悩みです。現場でよく使う工夫はこちら。
設定温度を27〜28度と高めにして、扇風機やサーキュレーターで風を回す(直接体に当てず、壁や天井に向けるのがコツ)
「切る」のではなく「温度を上げる」ことを覚えてもらう
ひざ掛けやカーディガンで「寒さ対策」をしながら冷房を続ける
「今どきのエアコンはつけっぱなしの方が電気代が安いこともあるんだって」と、もったいない気持ちに寄り添った声かけをする
また、日中は遮光カーテンやすだれで直射日光を防ぐだけでも、部屋の温度はだいぶ変わります。寝る時は、タイマーで切れる設定にすると明け方に室温が上がって危ないことがあるので、熱帯夜はつけたままの方が安心です。
危ないサインの見分け方と、そのときの対応

どんなに気をつけていても、体調は崩れることがあります。早く気づいて早く対応することが何より大切です。
こんな様子は要注意
顔が赤い、体がいつもより熱い
めまい、ふらつき、足がつる
なんとなく元気がない、食欲がない
ぼーっとしている、返事がかみ合わない
おしっこの回数や量がいつもより少ない
高齢者の場合、「なんだか、いつもと違う」というご家族の直感が一番のセンサーです。はっきりした症状がなくても、様子がおかしいと感じたら疑ってください。
気づいたらすること

涼しい部屋に移動して、横になってもらう
飲めるようなら、経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ
首のまわり、わきの下、足の付け根を、保冷剤やぬらしたタオルで冷やす
ためらわず救急車を呼ぶ目安

次のような時は、様子を見ずに119番してください。
呼びかけへの反応がおかしい、意識がはっきりしない
自分で水分を飲めない
ぐったりして動けない、けいれんがある
「大げさかな」とためらう気持ちは分かりますが、高齢者の熱中症は進むのが早いことがあります。迷った時は、救急相談の「#7119」に電話して相談する方法もあります。かかりつけ医やケアマネジャーに日頃から「迷った時はどうするか」を確認しておくと、いざという時に慌てません。
一人の時間をつくらない工夫も、立派な熱中症対策
日中お一人で過ごす時間が長い方は、どうしても発見が遅れがちです。

デイサービスの日は、涼しい環境で水分もしっかりとれる「安心な日」。夏場の利用日を増やす相談をケアマネジャーにしてみるのも一つです。
離れて暮らしているなら、暑い日は「暑いね、エアコンついてる?お茶飲んだ?」の電話を習慣に。
訪問した時は、部屋の温度、飲み物の減り具合、顔色と汗のかき方をさっとチェック!
「見に行く」「電話する」「サービスを使う」。人の目が入ることそのものが、夏を安全に乗り切る力になります。
まとめ:本人の感覚に頼らない仕組みづくりを
高齢者の熱中症対策のポイントを、最後にまとめます。
高齢者は「のどの渇き」も「暑さ」も感じにくい。本人の感覚に頼らない。
水分は時間で決めて、生活の節目とセットに。食べる水分や好みの飲み物も活用する。
トイレの不安など、飲まない理由に寄り添う。
温度計を置いて数字で判断。エアコンは「消す」より「温度を上げる」。
「いつもと違う」と感じたら早めに対応。迷ったら#7119やかかりつけ医へ。
夏の介護は、心配ごとが増える季節です。でも、ちょっとした習慣と環境づくりで、防げるものはたくさんあります。この記事が、大切なご家族と穏やかな夏を過ごすお手伝いになれたらうれしいです。
では、皆さまの明日がすんばらしい1日となりますように・・・今日もありがとうございました!

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